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徳次は気が抜けたやうに、口のあたりをもごもごさせるきりだつた。
「徳さん、君は草履ばきぢやないか」
「なに、ろくでもない用事で帰つたもんですから、どこへも失礼していたんです」
「別に何日からでもないんです。今日からでも――」
そんな風におぼえていてくれるとは思ひがけなかつた。
「ふん」
「やっぱりチブスで?」
「いや、そこまで確かなことにはしませんでしたが」
と気のない返事をした。
正文は顎をつき出しては一寸笑つて、ふむ、ふむ、とひとりでうなづいていた。
と、房一を誘つていた。
「いや、そのうち。――ぜひ御相談があるんですが。――そのうち、一度来ていたゞいて。いや、私の方から出かけませう。や、又――」
盛子は妊娠していた。